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SES(システムエンジニアリングサービス)業界では、
「案件」と「エンジニア」の情報を正確に管理し、素早くマッチングさせることが重要です。しかし実際には、
「どのエンジニアが今どんな案件に入れるのか把握できない」
「メールで届いた案件情報が整理されず、すぐに見つけられない」
「営業ごとにやり方がバラバラで、チームでの引き継ぎや共有がうまくいかない」
などといった課題を抱える企業も多くあります。
こうした課題を解決する手段として注目されているのが、CRM(顧客関係管理)ツールです。
中でも「HubSpot」は、案件管理やエンジニア情報の管理、営業活動の効率化までを一元管理できるツールとして、SES業界でも利用することができます。
本記事では、HubSpot CRMがSES業界でどのように活用できるのかを具体的に解説します。
▼この記事の要約
・SES業界では、案件とエンジニアのマッチングをいかに正確かつ迅速に行うかが業績に直結する
・Excelやスプレッドシートでの管理には限界があり、情報の分散や属人化が大きな課題である
・HubSpot CRMを活用することで、案件・エンジニア・営業活動の情報を一元管理できる
・マッチング精度とスピードを向上できる
▽こんな方にオススメ
・SES業界でCRM導入を検討している方
・エンジニア管理や案件管理に課題を感じている方
・Excelやスプレッドシートでの管理に限界を感じている方
・属人化した営業体制から脱却したい方
目次
1.SES業界におけるCRMの重要性
SES業界では、「案件」と「エンジニア」という2つの軸があり、これらをいかに迅速かつ的確にマッチングできるかが、売上拡大の鍵を握ります。
この案件やエンジニアの管理を、ExcelやGoogleスプレッドシートで管理しているというSES企業もいますが、CRMで管理することで、情報の一元管理とマッチングの精度が高まり、「提案の遅れによる案件獲得の機会損失」や「稼働できるエンジニアを提案しそびれる機会損失」を防ぐことにつながります。
ここでは具体的に、「案件の管理」「エンジニアの管理」「案件とエンジニアのマッチング」の観点から、CRMの重要性を解説します。
1.1 案件の管理
SESにおける「案件」とは、SES契約に基づいて2次請けや3次請けの企業からSES企業に依頼される業務やプロジェクトのことです。
システムやソフトウェアを開発する案件、システム全体の設計や要件定義・テストなどを行う案件、サーバーやネットワーク構築を行う案件などさまざまな種類があります。
これらの案件をSES企業が獲得する方法は、主に以下の2つが多いです。
・新規営業による獲得
・既存取引先(上流工程)からの依頼
そして、案件依頼や詳細のやり取りは、メールや電話で行うという企業も多いため、案件管理が煩雑になりやすいという課題もあります。
このような場合、CRMツールを導入することで、受け取った案件情報を一元的に管理できるようになります。
また管理以外にも、組織内や営業部内での情報共有がスムーズになり、案件を適切なエンジニアにマッチングさせるための体制を整えることができます。
1.2 エンジニアの管理
SESビジネスにおけるもう一つの軸が「エンジニア」です。
エンジニアと一口にいっても、SES企業が抱えているエンジニアは、さまざまな経験やスキルをもつ人材が混在している状況です。
そのため、エンジニアのスキルセット、実務経験、資格、単価、稼働状況など、1人のエンジニアに対して多数の情報を管理する必要があります。
これらの情報をExcelやGoogleスプレッドシートなどでアナログ的に管理している企業も少なくありませんが、情報更新の手間や管理方法の属人化により、マッチングの機会損失を起こしてしまったり、マッチング精度が低くなるといったリスクがあるのが現状です。
このような場合にも、CRMツールの導入は有効です。
CRMにエンジニア情報を登録・管理することで、情報の検索性や可視性が向上し、案件とのマッチング精度を高めることができます。
また、エンジニアが希望する案件にアサインできるということにも繋がるため、離職率などを下げることにも繋がります。
1.3 案件とエンジニアのマッチング
SESビジネスにおいて、エンジニアのアサインは「スピード命」です。
たとえ良質な案件だったとしても、エンジニアの選定やクライアント企業への提案が遅れればすぐに埋まってしまい、売上になりません。
そのため、「誰が・いつ・どの案件に対応できるか」を即座に判断できるための環境が必要不可欠なのです。
ここでもCRMツールが有効です。
CRM上でエンジニア情報と案件情報をもとに条件絞り込みをしたり、関連付けたりすることで、案件起点では「案件に対して提案可能なエンジニアをすぐに抽出する」ことができ、エンジニア起点では「スキルや経験をもとにアサイン可能な案件をすぐに抽出する」ことができます。
このように双方向からのマッチングを効率化し、精度を高めることができるため、クライアント企業とエンジニアの満足度の向上、そして営業のアクションの高速化と成約確度の向上が期待できます。
2.SES業界でよく利用されるCRM
2.1 SES特化型CRM
ツール名 | 特徴 | 価格帯 |
---|---|---|
SESクラウド | ・SES特化のマッチング、帳票管理、案件/人材管理、メール連携、帳票PDF送付などの一元管理が可能 | ・初期費用:50,000円(税別) ・月額費用:10,000円~30,000円(税別) ・1ヶ月無料トライアルあり |
wisefocus | ・SES特化のMA/SFA/CRM統合ツール ・人材、顧客、営業管理、BI分析、請求書発行、労務管理など多機能 | ・Free Trialあり ・Basic:30,000円~ ・Premium:50,000円~ ・Enterprise:要問い合わせ |
Fairgrit® | ・勤怠、契約、メンタル管理など、現場効率重視のSES特化型CRM ・フォロー対象の自動抽出や請求の自動生成も可能 | ・初期費用:0円 ・月額費用:55,000円~ |
SES WORKS | ・SES契約管理と請求業務の自動化に特化 ・営業支援や進捗管理も可能な一元管理ツール | ・初期費用:0円 ・月額費用:880円~(税込) |
Cotom | ・SES管理に特化 ・案件、請求、スキルシートまで一元管理 ・スマホ対応やグラフ可視化など営業支援機能が豊富 | ・初期費用:0円 ・月額費用:5,980円(シンプルプラン) ・無料トライアルあり |
2.2 汎用型CRM
ツール名 | 特徴 | 価格帯 |
---|---|---|
HubSpot CRM | ・全世界25万社以上が導入 ・SESにも実績あり ・MA、営業、CS、求人管理、レポート/ダッシュボードまで統合可能 | ・月額¥2,400~ (無料版あり) ※月間契約の月額料金で記載 ※年間契約の場合、月額料金はディスカウントあり |
Salesforce Sales Cloud | ・世界No.1のCRM ・柔軟なカスタマイズ性がありSES業界でも活用可能 ・広範な製品ラインナップが特徴 | ・starter:月額3,000円(税抜) ・Pro Suite:月額12,000円(税抜) ・Enterprise:月額19,800円(税抜) ・Unlimited:月額39,600円(税抜) ・Einstein 1 Sales:月額60,000円(税抜) |
Zoho CRM | ・低価格帯で機能網羅性が高く、SES企業にも人気 ・条件検索やタグ管理に優れる ・セキュリティ、拡張性も◎ | ・15日間無料トライアルあり ・スタンダード月額2,400円(税抜) ・プロフェッショナル:月額4,200円(税抜) ・エンタープライズ:月額6,000円(税抜) ・アルティメット:月額7,800円(税抜) ※月間契約の月額料金で記載 ※年間契約の場合、月額契約の34%OFF(2025年4月現在) |
3.HubSpot CRMとは
CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客情報や顧客の行動履歴、関係性を管理するためのツールやシステムのことを指します。
企業が顧客との関係を構築・強化し、売上の最大化を目指すために活用されます。
関連記事:
📚CRMとは?機能や導入時の注意点
『HubSpot CRM』は数あるCRMツールの中でも人気が高いCRMで、その理由は、
・無料から利用可能
・導入のハードルが低い
・直感的な操作性
・MA、SFA、CMSなど他ツールと統合されている
などが挙げられます。
HubSpot CRMは、無料プランから利用することが可能です。
基本的な機能はすべて無料で使うことができ、組織の必要性に応じて有料プランにアップグレードしていくことができます。
そのため、「時間もお金もかけて導入したのに自社には合っていなかった」という結果に陥ることがなく、コストや導入工数の無駄を省くこともできます。
関連記事:
📚HubSpot CRMとは?主な機能や活用メリットをわかりやすく解説
4.SES会社の各部門におけるHubSpot活用イメージ
4.1 案件管理
SES企業における案件管理では、日々の膨大な案件情報を正確かつスピーディに処理することが求められます。
特に、営業担当者が複数の案件や取引先企業を同時に対応する場面では、Excelやスプレッドシートでの管理には限界があります。
CRMツールを活用することで、案件の情報を一元管理し、営業プロセス全体を可視化することが可能になります。
HubSpot CRMでは、以下のような案件管理体制を構築できます。
・案件ごとにステータス(例:情報収集中、提案済み、Closeなど)を明確に定義
→し、進捗状況を一覧で把握
・案件発生日や案件の優先度、スキル要件などの項目を活用し、検索やフィルタリングを容易に
・取引先企業ごとに案件履歴や担当者情報を蓄積
→過去情報を基にエンジニアのアサインなどを決定できる
たとえば、スキルが「Java」「React」「AWS」で、単価が60万円以上、稼働可能日が翌月以降の案件を抽出する、といった複雑な条件でも、数秒で絞り込みが可能です。これにより、エンジニアのスキルセットに合致する案件をすぐに確認でき、機会損失を防ぐことができます。
さらに、案件ごとの進捗に応じてタスクやリマインダーを設定することで、提案漏れや連絡忘れといったヒューマンエラーの削減にもつながります。CRMに案件情報を蓄積することは、短期的な業務効率化だけでなく、長期的な営業資産の構築にも直結します。
SES業界では、案件のスピード感と正確性が売上を左右します。だからこそ、案件管理にCRMを導入することで、チーム全体の連携を強化し、競合他社との差別化を図る基盤を築くことができるのです。
4.2 エンジニア管理
SES事業において、エンジニアのスキルや稼働状況を正しく把握することは、案件の受注率や顧客満足度に直結します。
しかし、Excelやスプレッドシートなどで管理していると、情報が分散したり、最新の状態が把握できず、提案の遅れやミスマッチを招く恐れがあります。
HubSpot CRMでは、以下のような案件管理体制を構築できます。
下記のような提案に必要なエンジニアの情報を一元管理できます。
・各種スキルセット
・実務経験年数
・単価
・勤務可能開始日
・希望勤務地
・リモート勤務希望
・稼働状況
・稼働開始可能日
・勤務地の希望
・過去の案件履歴 など
▼イメージ(例:園児似 あかりさん)
たとえば、「Java経験3年以上」「単価65万円以上」「週5フル稼働可能」「東京都内勤務希望」といった条件でエンジニアを抽出することができ、案件とのマッチング精度が大幅に向上します。
また、CRM上で更新履歴やアサイン情報も管理できるため、引き継ぎもスムーズで、属人化のリスクも低減できます。
このように、エンジニアの情報を“データベース化”することで、営業が誰でもすぐに最適な人材を提案できる環境が整い、組織全体の生産性向上につながります。
4.3 案件とエンジニアのマッチング
SES業界におけるマッチング業務は、営業の成果を左右する重要なプロセスです。
HubSpot CRMでエンジニアと案件それぞれの情報を一元管理し、それと合わせて拡張機能である「Matching Extension」を活用することで、双方の条件に応じた案件または人材の絞り込みができるようになり、スピーディな提案活動が可能になります。
案件側の要望(業務内容、使用技術、稼働期間など)と、エンジニア側の希望(働き方、勤務地、キャリア志向)を可視化した上での照合が可能なため、ただのスキルマッチではなく、「長期稼働が見込めるマッチング」「定着率の高いマッチング」など、質の高いアサインができます。
たとえば、以下のような条件での検索・マッチングが可能です。
▼案件
「Java」「Vue.js」経験者/単価70万円以上/即稼働可能
▼エンジニア
稼働可能日が翌月/単価希望65万円〜/東京23区勤務可
4.4 営業管理
SES事業における営業活動は、案件獲得、案件と人材のマッチング、契約締結など多岐にわたります。
そのなかで、提案漏れや企業・エンジニアのフォロー漏れ、そして案件の進捗状況の可視化不足などの課題をもつ企業も少なくありません。
こうした課題を放っておくのは、業務効率の悪化や受注率の低下に直結してしまいます。
そこでHubSpot CRMを使い、営業プロセス全体を管理し、「誰が・どの案件を・どのフェーズで対応しているのか」を把握できるようになります。
具体的には以下のような管理が可能です。
・案件ステージの可視化(例:情報収集 → 紹介・提案 →待機→稼働→失注)
・担当営業者の割り当てと変更履歴の記録
・タスクの自動生成・リマインダー設定
・案件メモ・営業履歴の共有
・メールやコールの履歴記録 など
たとえば、エンジニア提案中の案件に対してフォローが1週間空いている場合にアラートを設定するなどができ、対応漏れ防止ができます。
また、HubSpot公式のモバイルアプリを活用すれば、外出先でもすぐにスマホで案件情報の確認や更新ができ、フットワークの軽い営業活動を行うことができます。
4.5 稼働管理
SES事業では、エンジニアが「今どこで」「いつまで」働いているのかを正確に把握することが非常に重要です。
これができていないと、企業への提案のタイミングを逃したり、契約更新の連絡が遅れたりしてしまい、売上の機会損失や顧客満足度の低下を招く恐れがあります。
そこでHubSpot CRMを使うと、以下のような「稼働に関する情報」をコンタクトオブジェクト(エンジニア情報)にまとめて管理できるようになります。
・現在の稼働状況(稼働中/待機中/内定済 など)
・稼働開始日・終了予定日
・契約期間・延長可否
・月ごとの稼働実績 など
たとえば、「今月末で稼働終了予定のエンジニア」を一覧で抽出したり、「待機中エンジニアの案件提案」を優先的に行うといった対応が可能になります。
また、パイプライン管理機能を活用すれば、エンジニア1人ひとりのアサイン状況を可視化し、進捗管理もスムーズに行えます。
4.6 分析
SESのビジネスモデルでは、「どのくらい提案したか(提案数)」「どれだけ受注できたか(受注件数・金額)」「エンジニアがどれくらい稼働しているか(稼働率)」などの数字を、明確化し、把握できるようにしておくことが重要です。
こうした数字を定期的にチェックすることで、営業のやり方やエンジニアの配置を見直し、売上を最大化させることができます。
HubSpotのレポート機能やダッシュボード機能を使えば、それらの情報をリアルタイムで管理できるようになります。例えば、
・提案数、受注数、失注数(どれだけ提案して、どれが受注につながったか)
・エンジニアの稼働状況(今何人が働いていて、誰が空いているか)
・売上、利益(企業ごとや案件ごとにどれだけ売上があったか)
・提案から受注までにかかった時間や、平均単価
・営業担当者がどれだけアクションしたか(フォロー件数やスピードなど)
などの情報を可視化、分析できるようになります。
また、会社ごとに必要な指標(例:「Java案件の受注率」や「直請け案件の利益率」など)も、自社の目的や用途に合わせてカスタマイズできます。
5.HubSpot CRMをSESで利用するメリット・デメリット
5.1 メリット
HubSpotは、米国をはじめ世界中の多くの企業で使われているCRMツールで、SES業界でも活用することは十分できます。
SES企業がHubSpot CRMを利用するメリットには、以下が挙げられます。
・情報の一元管理ができる
エンジニアや案件、企業情報をExcelやスプレッドシートで管理する必要がなくなる
・案件とエンジニアのマッチングのスピードと精度が上がる
スキル、単価、稼働時期などでフィルタをかけ、条件に合うエンジニアや案件をすぐに探せる
・部門横断で誰でも同じ情報を見られる
営業担当者が退職や交代をしても、情報の引き継がスムーズにできる
・自動化・通知機能が豊富
タスクのリマインドや営業担当者への通知など、営業活動の効率化を支援してくれる
5.2 デメリット
一方で、SES業界ならではの注意点もあります。
・SES特化型のCRMのように業務に特化した機能は標準でついていない
勤怠管理や帳票出力、SES契約書類の自動生成といった機能は、HubSpot単体では対応していないため、必要に応じて外部ツールとの連携やカスタム開発が必要となる
・無料プランの機能には限界がある
基本的なCRM機能は無料で使えますが、本格的にマーケティングや営業の業務に組み込むには、有料プラン(Marketing Hub/Sales Hub/Operations Hub/Service HubのStarterプラン以上)への移行が前提になるケースがある
6.HubSpot CRMの導入を検討されている方へ
いかがでしたか?
HubSpot CRMは、SES業界特化のツールではないものの、柔軟なカスタマイズ性と使いやすいUI、そしてマーケティングや営業、カスタマーサポートまで一貫して業務遂行するための機能が揃っている点で、多くの企業に支持されています。
とくに、
・案件やエンジニア情報をリアルタイムで正確に整理したい
・組織や部門間での情報連携をスムーズにしたい
・データ保有の属人化をなくし、誰でもすぐに提案できる体制にしたい
というSES企業には、大きなメリットがあります。
「何から始めていいかわからない」
「SES業務に合うか心配」
という方も、まずは無料プランから使ってみてはいかがでしょうか。
ナウビレッジは、HubSpot認定パートナーです。
SES業務にあわせた初期設計から運用サポートまで伴走型の支援を行っています。
HubSpotに関してご相談がある際は、お気軽にご相談ください。
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